『オーバーキル』一軍男子に脅かされています
次に向かったのは、住宅地の中に佇むステンドグラス工房。
先日、匠刀の部屋にあった虎太くんのお土産のガラス玉をヒントに、私たちはステンドグラス工房に体験予約を入れた。
見るだけでも楽しいけれど、実際に小さいステンドグラスを自分で作ってみると感動もので。
光に反射して虹色に変化する。
「兄貴が面白かったって言ってたけど、実際やってみると、こういう体験ものも結構いいな」
「そうだね。すごくいい想い出になるよね」
丁寧に梱包して貰った箱を鞄にしまって、私たちは川崎駅へと向かう。
「どこか、カフェにでも入るか?」
「クリスマスだから、どこも混んでるでしょ」
「じゃあテイクアウトするか」
「うん、そうしよう」
駅へと向かいながら、カフェがあったら立ち寄ればいいのに。
匠刀はもう完全に癖になってる。
スマホのナビで、近場のカフェをすぐさま検索し始めた。
「匠刀」
「ん?」
声だけ返ってくる。
視線はスマホを捉えたままだ。
「匠刀」
「……どうした?気分悪いか?」
ほらね。
私が名前呼んだだけなのに、すぐに私の体を心配する。
こっちを見て欲しかっただけなのに。
「やっと目が合った」
「……っんだよ」
私の言葉に安堵したのを、私は見逃さなかったよ。
そんなにも心配させてしまってるんだね。
右手でスマホを操作する匠刀。
左手は私の右手を握ってる。
書き慣れなくてちょっとぎこちないけど。
私は左手で匠刀の背中に『スキ』と書いた。
「今、何て書いたの?」
「さぁ、何でしょう?」
「当たったら、ちゅーしてくれんの?」
「一発で当たったらね」
当たらなくても、ちゅーくらいしてあげるよ。
顔を近づけて来た彼は、『余裕』と言わんばかりの顔でチュッとキスした。
「『スキ』って書くなら、せめてひらがなにしとけ」
「っっ」