『オーバーキル』一軍男子に脅かされています
「匠刀、手冷たくなってきた」
「……貸してみ」
スマホを弄っていたちっちゃな手が、俺の顔の前に現れる。
手を繋いでないと、すぐにキンキンに冷えてしまう手。
コートのポケットの中にカイロが入っていて、片方の手はそこへと。
そして、もう片方の手を俺は大事に握りしめる。
「いつ繋いでもあったかいね」
「……ったりめーだろ」
そのために、日々握力つけて筋肉維持してんだかんな。
*
桃子が俺を避けた5日間。
一体、何を考えたのだろう。
俺が桃子の犠牲にでもなってると思い込んでないだろうか?と不安で。
あの日以来、無理して俺に笑顔を見せてる気がしてならない。
俺以外の奴が何を言おうが、全部無視して、俺だけを見つめててくれたらそれでいい。
俺には桃子。
桃子には俺。
他の奴なんてどうでもいい。
だから、俺のために無理すんなよ。
俺はありのままのお前が好きなんだから。
「俺のどこが好き?」
「え?……何、こんなとこで急に」
「別にどこだっていいじゃん。クリスマスなんだし」
『好き』とは言われても、どこがどれくらい好きなのか、聞いたことがない。
「優しいとこ」
「あとは?」
「……イケメンな顔」
「フッ、他は?」
「腹筋割れてるとこ」
「なぁ、それって、俺じゃなくてもよくね?兄貴だって優しいし、イケメンだし、俺より腹筋割れてんじゃん」
「虎太くんに嫉妬しないのっ」
「すんだろ、普通に。夏祭りの時に助けたのだって、俺じゃなくて兄貴だとずっと思い込んでたくらいなんだから」