『オーバーキル』一軍男子に脅かされています

兄弟だから似てるのは当たり前だけど。
俺を好きな理由にはなんねーよ。

「虎太くんと匠刀は違うよ」
「何が違うんだよ。DNAだって、ほぼ一緒じゃん」
「そういうレベルの話じゃなくて」
「……っんだよ」

兄貴が紳士的で人気があるのは分かってる。
ご近所の人だって、うちの道場に通ってる保護者にだって。
いつだって好かれるのは兄貴の方だ。

「虎太くんはみんなに優しいタイプじゃない」
「……」
「匠刀は私にだけ、甘いでしょ?」
「……っんなの、当たり前じゃん」

好きな子以外に尽くせねーっつーの。

コートの襟をクイクイッと引っ張る桃子。
それに応えるように口元に顔を近づけると。

「そういうさりげない優しさも含めて、私だけを大事に思ってくれてるのも嬉しいし。甘やかすだけじゃなくて、ちゃんと色々考えてくれるところとか……もうキリがないくらい全部匠刀一色だよ」

ずっと聞きたかった答えが返って来た。

俺の全てを桃子が埋め尽くすように。
桃子の中も俺で埋め尽くしたい……そう思ってた。


男なんて単純な生き物だ。
幼い頃に言われた、たった一言で好きになって。
それからずっと一途に想い続けてる。

『たくとにおんぶされるの、すき。ここは“とうこ”だけだよ?』

きっとお前は憶えてねーよな。

具合が悪くなったら嫌なのに。
お前をおんぶできる時が一番幸せだったんだ。

「あ、そうだ。匠刀にクリスマスプレゼントあるんだぁ♪」
「は?」
「ちょっと待ってね~」

そう言った桃子は、お気に入りのバッグの中から何かを取り出した―――。

「LOVE♡」
「っっ……ばーか」

取り出したのは、指ハートだった。
にこっとと笑った顔がマジで可愛すぎんだろッ。
< 109 / 165 >

この作品をシェア

pagetop