『オーバーキル』これ以上、甘やかさないで
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「桃子、大丈夫か?」
「今は放っておいてあげましょうよ」
「……そうだな」

父親が運転する車の後部座席に座る桃子。
その桃子の瞳からは、大粒の涙が溢れていた。

見知らぬ女子生徒から指摘され、桃子は改めて現実の厳しさを思い知った。

匠刀や両親に励まされ、頑張ってみたけれど。
自分の成長なんて、物凄く僅かで。

周りの女の子たちがどんどん綺麗になって成長しているのに。
自分は普通に生きることが精一杯。

大好きな彼氏に思う存分甘えさせてあげることも。
ごくごく普通のカップルがすることも、難しくて。

匠刀を見るたび、会うたびに厳しい現実を突き付けられた。

大好きだから。
大切だから。

だから、匠刀には無限の可能性を味わって貰いたくて。
狭い鳥かごの中で過ごすことより、自由に羽ばたいて色んな幸せを掴んで欲しいと思えた。


桃子は主治医に相談し、両親に苦しい胸の内を打ち明けた。

『自分の力だけで、強くなりたい』

誰かに支えられないと生きていけない弱い自分ではなくて。
地に足をつけて、他の子と違う生き方だったとしても、ちゃんと胸を張って生きて行きたいから。

桃子は両親の許可を得て、白修館高校を退学した。
匠刀や親友の素子にさえ、秘密にしたまま。

主治医の財前の診断書と推薦書を手にして、他県の高校へと転校手続きを済ませていた。
そして当然、かかりつけの白星会医科大学病院の系列の病院への転院(通院)手続きも済ませたのだった。

転校先の高校は私立の全寮制で、女子校というのが両親を説得できた一番のポイントだ。
月に一回、主治医の財前がその系列病院で臨時医として診察を受け持っているというのも大きい。

年末年始を祖母の家で過ごすというのは建前のような、嘘のような…。
桃子は匠刀から離れて、新しい人生を歩む決断をした。
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