『オーバーキル』一軍男子に脅かされています


GWに入り、兄貴の彼女が遊びに来た。

白修館大学へと内部進学した兄貴は、空手を続けながら、教育学部を専攻している。
将来、現役を引退したら、小学校の教諭になりたいらしい。


野獣のような体躯だが、子供たちに指導するのは丁寧で。
教師を選択したのは、兄貴らしいなと思った。

「匠刀、ちょっと入るぞ」

すっかり引きこもりの俺を心配してか。
兄貴が珈琲の入ったカップを手にして現れた。

「彼女は?」
「母さんと夕飯作ってる」
「もうすっかり嫁じゃん」

付き合い始めて一年ちょっと。

女っ気が全くなかったオタクの兄貴に初めてできた彼女は、なんと兄貴と同じで、アニメオタクだった。
だから意気投合したのだろう。

今じゃすっかり家族の一員みたいになって、しょっちゅう泊りに来てる。

「部活もしてないんだってな」
「……それが言いたくて来たのかよ」

自宅での稽古もすっぱり辞めた俺は、部活も勉強も全てを放棄した状態。

桃子がいなくなって暫くは何も言わなかったけど、最近はしつこく稽古しろと言って来る。

「明後日、誕生日だろ」
「……」
「俺から、2日早いプレゼントやるよ」
「……」

どかっと座り込んだ兄貴は、何だか楽しそうに俺を見る。

5月7日は俺の誕生日。
子供の頃は兄貴から誕生日プレゼントを貰ったりしたけど、もう何年も貰った記憶がないのに。

「モモちゃん、全寮制の女子校に通ってるって」
「ッ?!!!今、何て言った?!」
「だから、全寮制の女子校だって」
「何で兄貴が知ってんの?どこにある女子校?何県?こっから遠いの?桃子は元気にしてるって?」
「お前ホント、モモちゃんのことになると凄いな」
「俺のことはどーでもいいから!桃子のことを教えろよっ!」

突然の兄からの言葉に、俺はベッドから起き上がり、ラグの上に正座した。
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