『オーバーキル』一軍男子に脅かされています

以前桃子から貰ったバイク雑誌の中に1枚の写真が挟まっていた。

その写真は、うたた寝している俺に寄り掛かっている桃子の自撮り写真。
そして、その写真の裏に、こう記されていた。



辛い時に優しく摩ってくれる手
心配そうに駆け寄って来る真剣な顔
心まで温めてくれるぬくもり
恥ずかしがって逸らす視線
わざと意地悪く装うぶっきらぼうな態度
微塵も不安にさせない一途な優しさ
ずっと変わらず『桃子』と呼んでくれたこと

全てが愛おしくて、大好きだよ



初めての手紙を読んだ時と同じで、涙が溢れて来る。

好きな子だから、当たり前にしていた1つ1つが、ちゃんと伝わっていた。

そして、『大好きだよ』という5文字が、俺を突き動かす。

『大好きだったよ』ではない。

二度と俺と会うつもりがないなら、あいつのことだから絶対に期待させるようなことは言わない。

すなわちそれは、桃子の中で、いつの日か……。
堂々と胸を張って会える日が来たらいいな、という気持ちが込められている。
そう俺は解釈した。

桃子は桃子なりに、自分自身にけじめをつけたに違いない。
誰かに支えられるだけの人生なのではなく。
自分の足でしっかりと生きることを選択した。

だったら、俺だって。
次会った時に、『離れるんじゃなかった』と後悔させてやる。

もっともっとカッコイイ男になって。
他の男なんて目に入らないくらい、イケてる男になってやる。



「親父っ」
「おっ、どうした」
「塾通わせて」
「は?」

クリスマスの夜から、廃人と化していた匠刀が、17歳の誕生日のこの日。
漸く息を吹き返した瞬間だった。
< 134 / 165 >

この作品をシェア

pagetop