『オーバーキル』一軍男子に脅かされています
代々木公園内をゆっくりと歩く。
クリスマスのイルミネーションに彩られた夜景は幻想的だけど。
青白い電飾の灯りが、再会と別れを示唆してるみたい。
「心理医療学科だったっけ?」
「……うん」
「そこを卒業して、何になるの?」
「……臨床心理士」
「おっ、意外だな。他者と関わるのが苦手だった桃子が、臨床心理士か」
そうだよね。
私だって未だにそう思うよ。
だけど、教授にも言われたの。
他者に言えない気持ちや辛い過去を背負っている分だけ、人の心に寄り添えるスキルになるからと。
「匠刀はお医者さんでしょ?」
「……まぁ、そうだな」
「まだ4年だから決めてないかもだけど、希望の専攻とかあるの?」
胸部外科を目指してるわけじゃないと言ったから。
ちょっとだけ気になってしまった。
元々頭はいいし、手先も器用だし、人を労われる思いやりのある人だから。
『医師』という職業には向いていると思う。
教え方も上手いから、学校の先生とかにも向いてる気がするけれど。
匠刀が選んだ道は、医学の世界なんだね。
「大雑把に言えば、外科医」
「外科……手術をするお医者さんだね」
「ん」
真っすぐと前を向いていた彼が足を止め、くるりと体を私の方へ向けた。
「正確には、小児外科医。桃子が幼い時に苦しんだみたいな子たちを救う医者になりたいんだ」
「っっ」
「小さな体にたくさんの装置つけて、必死に頑張ってる子のために、少しでも役に立てる、そんな医者になりたい」
「……素敵な夢だね」
「だろ?」
そっか。
私が自分の未来を歩み始めてるように。
匠刀も自分の未来のために頑張ってるんだね。