『オーバーキル』一軍男子に脅かされています

意外だ。
匠刀が他者に気を遣うなんて。
いつだって自由気ままに、自分がやりたいようにする奴なのに。

「目の前で兄貴が彼女にデレてんのを見るのも、さすがにな」

あぁ、そうか。
私を誘ったということは、私もその現場を目撃しないとならないのか。

「兄貴の彼女を間近で見たら、お前も吹っ切れんだろ」
「余計なお世話だよっ」
「いい加減、兄貴から卒業しろや」
「……わかってるよ、言われなくても」

自宅まで駅から歩いて10分弱。
その道のりが物凄くあっという間に感じた。

「あら、匠刀くん、運ぶの手伝ってくれたの?」
「たまたま駅で行き会ったんで」
「悪いわね。重かったでしょ」
「全然っすよ。それより、この後、桃子借りてもいいっすか?」
「桃子を?」
「はい、デートに誘ったんで」
「はぁ?!」
「え、あらっ、二人はそういう関係なの?」
「やだお母さん、本気にしないでよっ」
「ホントの話だろ」
「(誰があんたとデートするって言ったのよ?!)変なこと、親に吹き込まないで」
「帰りは何時までに送ってくればいいっすか?」
「特に門限とかはないけど、体調だけは気を付けて貰えれば」
「了解っす。ほら、行くぞ」
「……いってきます」
「いってらっしゃい」

母親に見送られ、来た道を戻る。

「ちょっと、匠刀」
「あ?」
「虎太くんと虎太くんの彼女と会うのも、ケーキバイキングに行くことも、あんたとデートすることも何一つ了承してないんだけど」
「ケーキ要らねぇの?駅前のドルチェのバイキングだけど」
「えっ……」

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