『オーバーキル』一軍男子に脅かされています

クリスマス間近の代々木公園。
イルミネーションを楽しむカップルが大勢いて、すぐ近くをその人たちが通り過ぎてゆく。

「なっ、何、言ってんの……?」
「別にそんな驚くことじゃねーだろ」
「お、……驚くよ」

だって、私たちは6年前に……。

「いい機会だから言わせて貰うけど」
「……」
「お前、思い違いしてるかんな」
「……へ?」
「言っとくけど、俺は別れたつもりはねーし、別れるつもりも微塵もねーから」
「っ…」
「例え、桃子が俺と別れたくてしたことだとしても、それをすんなりと受け入れるつもりもねーから」
「っっ」
「あ、それと」
「……」
「散々俺をその気にさせといて、目の前から消えたらそれで俺の気持ちがなくなるとか、ありえねぇっつーの」
「っっ」

あぁ、また同じ過ちを繰り返してる。
自分のことしか考えられなくて、匠刀の気持ちを蔑ろにしてしまった。

昔も今も、私は何一つ変わってないのかもしれない。

「この6年、1日だって忘れたことねーし。いつかまた会えると信じてたし」
「っ…」
「今日、6年ぶりに桃子見て、再認識した」
「……?」
「今でも好きだし、前よりもっと好きになってる」
「っっ」
「一目会いたい。会ったら会ったで声が聴きたい。声を聴いたら聴いたで抱き締めたくなったし。こうして抱きしめたら、当然ちゅーしたくなんだろ」
「っっ~~っ」
「桃子は違うのかよ。……俺のこと、ずっと好きだったくせに」
「っっっっっ」

真央が余計なこというから。
言い訳も言い逃れもできそうにない。

だって、匠刀の腕の中は。
世界中で一番安心できる場所だって分かってるから。

< 152 / 165 >

この作品をシェア

pagetop