『オーバーキル』これ以上、甘やかさないで
駅前にあるカフェ『ドルチェ』はプチケーキのバイキングが人気で、予約しないと食べれない。
甘さ控えめで、桃子のお気に入りの店でもある。
けれど、虎太くんと虎太くんの彼女と一緒にというのは、とてつもなくハードルが高い。
「挨拶して、幾つか食べたら帰ればいいだろ」
「それじゃあ、行く意味ある?」
「彼女さんの顔を立てるっつー意味では、行く意味あんだろ」
「……」
そうか。
私がいる、いないではなくて。
匠刀と仲良くなるためにわざわざ誘ったのだろうから。
「付き合ってくれたら、別のもん何か奢ってやるよ」
「嵐でも来るんじゃない?」
「言ってろ、ばーか」
隣りを歩く匠刀から、ボディーソープのいい香りがする。
虎太くんの彼女さんに会うために、わざわざシャワーして来たのかな?
「なんで普通科なの?」
「お前、唐突すぎ」
「ねぇ、なんで?」
ずっと聞きたいと思っていた。
空手だけでも結構大変なのに、普通科に入学したということは、勉強も相当してないと難しい。
そこそこの偏差値の高校ならまだしも、白修館は都内でもトップレベル。
勉強しか取り柄のない桃子でさえ、おちこぼれないか不安なのに。
「むさくるしい連中見んのは、部活と自宅道場だけで十分だろ」
「……そうかもしんないけど」
それにしたって無理があるんじゃない?
元々要領のいい奴だけど、さすがに高校の授業はレベルが違うよ。
「じゃあ、お前はなんで白修館にしたんだよ」
「え……」
「兄貴がいるから、一年だけでも一緒にいたいとか考えたんだろ?」
「っ……」
「校舎が違うし、学年が違うから、校内で会うことなんてほぼゼロなのに」
「っっ……」