『オーバーキル』一軍男子に脅かされています
わかってるよ、そんなこと。
匠刀に言われなくたって。
それでも、本気で一年だけでも同じ高校に通いたいって思ったんだもん。
まさか、彼女ができるなんて思ってなかったから。
匠刀の思う通り、白修館を選んだ意味がなくなってしまったけれど。
「兄貴の何がそんなにいいわけ?」
「え?」
「空手が上手くて男でも惚れ惚れする体ってんなら、朋希さんだって似たようなもんだし、図体デカいのに紳士的なとこがいいっていうんなら、柔道部や野球部とか他の部の人だって腐るほどいるだろ」
「そんなこと突然聞かれても分かんないよ」
確かに、白修館に通っていたら、将来有望なアスリートの卵みたない人は沢山いる。
虎太くんも匠刀もその中に入っていて、虎太くんの親友の朋希さんも同じくその部類だ。
だけど、私が彼を好きになったのは単に紳士的で優しかったからじゃない。
病弱な私を憐れな目で見ずに、一人の女の子として接してくれた点だ。
4年前の夏祭りの時に、急に気分が悪くなり、倒れそうになったのを虎太くんが助けてくれた。
自分が着ていたシャツを脱いで頭から被せてくれて、軽々と抱え上げて自宅へと連れ帰ってくれた。
胸は苦しいし、意識が朦朧としていて何て声をかけられたのか覚えてないけれど。
あの時の安心感と優しさは今でもちゃんと覚えている。
それまでも倒れることなんてしょっちゅうだったから、誰かに運ばれることにも慣れていたけれど。
あんな風に顔を隠して貰えたことは初めてだった。