『オーバーキル』一軍男子に脅かされています
ハラハラドキドキ、第3水曜日

少しずつ梅雨の走りかと思うような曇天が続く6月。
第3水曜日の今日は、3カ月ぶりの定期検診の日。

ここ2~3年は心臓の調子もよく、定期検診は数か月おきの時もある。

幼い頃はどうして走っちゃダメなのか。
何でお腹いっぱいに食べちゃダメなのか、根本的なことがいまいち理解出来なかった。

ダメだと言われたら、我慢がきかなくなるのが子供。
その度に何度も倒れて、入退院を繰り返していた。

高校生になった今は、心臓の構造も分かっているし。
何より、両親に心配をかけたくない。

深夜に何度も泣いている母をこっそり見て来たから。
他の子と少し違う体かもしれないが、これが私だから。


学校を休んで、かかりつけの病院へと母親と向かう。
片道15分ほどの道のりなのに、毎回この15分は、物凄く長く感じて。
心臓に負担をかけちゃダメなのに、どうしてもドキドキが止まらない。

心臓が悪くなってたらどうしよう。
前回の検査結果が悪かったらどうしよう。
新たな病気が見つかったらどうしよう。

ちゃんと薬は飲んでるし、状態をキープするための努力はしているけれど。
それでも不安が尽きないのだからしょうがない。

世の中にはもっと不自由な人が大勢いる。
薬を飲んで安定することができるのだから、私は軽い方だ。
そう自分自身に何度も言い聞かせて。



「検査順路が書かれていますので、全て終わったらまたここに来て下さい」
「……はい」

A4サイズの紙に、びっしりと埋め尽くされた文字。
『①心臓・血管超音波室』から始まり、『⑧呼吸機能検査室』までの予約時間が詳細に決められている。

「今日も一日検査になりそうね」
「……うん」

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