『オーバーキル』一軍男子に脅かされています

16時を回った頃。
診察も無事に終わり、会計待ちをしていると、母親がスマホ差し出して来た。
検査室は電波が届かないため、診察が終わるまでいつも母親に預けている。

電源を入れると、もとちゃんと匠刀からメールが届いていた。

『検査終わった?モモいなくて、寂しいよ~』
『どうだった?』

もとちゃんのメッセージで癒されるも、匠刀のメールを目にして、思い出してしまった。
半月ほど前の出来事を。

匠刀に誘われ、虎太くんと雫さんとケーキバイキングをした、あの日。
駅前のベンチで、匠刀は私を周りの視線から遮るようにしてくれた。

その出来事が、4年前のあの日と重なる。

当時小学6年生だった私をお姫様抱っこしてくれたのは、中学2年の虎太くんだと思ってたけど。
もしかしたら、匠刀だったのかもしれない。

意識が朦朧としていて、よく憶えてなくて。
ただ、『娘がお世話になりました』と父親が、施術をしに来た匠刀のお父さんにそう伝えてたから。
すっかり思い込んでいたというか。
他に考えもしなかったというか。

兄弟だから似ているのかも。
いや、性格は真逆のような二人だ。

育った環境から、同じような行いをするのかも。
いや、普段の匠刀を見てれば分かる。
紳士的とはとても言い難い。

「会計番号出たから、行って来るわね」
「ん」

モニターに会計番号が表示される仕組みだ。

『今、終わった』と匠刀に送信しようとした、その時。
ブブブッとスマホが震え、『着信中 匠刀』という文字が表示された。
すぐさま拒否ボタンをスワイプする。

『まだ病院内だから、通話はできない』
たぶんできないことはないと思うけれど、匠刀と電話で話すことなんて何もないのに。

『今どこ?』
『だから、病院内』
『病院内のどこ?』
『本館1階の総合受付の近く』

何?
この不毛なやり取り。

< 24 / 165 >

この作品をシェア

pagetop