『オーバーキル』一軍男子に脅かされています

匠刀が昔ら自分勝手なのは分かってるけど。
今私がどこにいようが関係ないのに。

だからといって無視すると、後でもっと面倒なことになる。
横暴というか、制圧力高めというか。

もとちゃんに返信メッセージを入力していた、その時。
母親がいた席にドカッと座る人物が。

「何でいるの?」
「で、どうだったの?……検診の結果」

長い脚を折り畳むみたいに組んだのは、今さっきやり取りした匠刀だった。

「おい、聞いてんのか?」
「先に質問したのは私じゃん」
「いや、俺が先だって。メールで『どうだった?』って聞いただろ」
「あ…」
「で、どうなの?」
「何であんたがそんなに心配するのよ」
「そりゃあするだろ。この間、具合が悪くなったばっかなんだから」
「……あれは」

この間のことを言ってるのだろう。
だけど、あれは具合が悪いうちには入らない。
ちょっと精神的にショックだっただけで。
眩暈自体は大したことなかった。

「異常なしだよ」
「……そっか」

はぁ~と、大きな溜息を吐いた匠刀。
こんな間近でホッと安堵した顔を見るのは初めてかもしれない。

いつも飄々としていて、のらりくらり愛想笑いのような。
嫌味はふんだんに盛り込まれるのに、感情が一切表に出ないような奴なのに。

彼の目の前で体調不良を訴えたからだ。
今までもそういうことは何度もあったけれど。
ここ2~3年は殆ど無かったから。

「ありがとね、わざわざ来てくれて」
「……ばーか」

照れくさいのか、被っているキャップの鍔を引き下げ、顔を背けてしまった。

いつだってそうだ。
一番最初に体調の変化に気づくのは匠刀だ。

僅かな変化に気付くくらい、そんなにも心配をかけてるの?

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