『オーバーキル』一軍男子に脅かされています

「あの、おばさん。来月の桃子の誕生日が日曜日なんですけど、一日連れ出してもいいっすか?」
「え?あ、えぇ~いいわよ~♪…デート?」
「そうっすね。まだ本人の許可得てないんすけど」
「許可も何も、そんなの要らないわよ」
「お母さんっ!勝手なこと言わないでよっ」
「どうどうどう……ヒス(=ヒステリック)ると心拍上がるぞ」
「あんたのせいでしょっ!」

どうどうどうって、私は動物じゃない!
それに、誕生日という特別な日をあんたみたいなチャラ男と過ごすとか、ありえないんだから!

「なんか欲しいもんとかあるか?今からならオーダー受け付けるけど」
「……(どういうつもりよ)いきなり…」

私たちが会話する度に母親がチラチラとルームミラーで後部座席を見るから、危ないったらありゃしない。
運転に集中して貰いたいのに。

「お母さん、安全運転で」
「はいはーい」

無事故無違反でゴールドドライバーの母だけど、一瞬の気の緩みが事故に繋がるから心配だ。

隣りに座る匠刀の肩をこつんと突っつき、スマホを翳す。
隣りに座ろうが、スマホがあれば会話できるもんね。

『あんた、何考えてんの?』
『何って、デートプラン?』
『だから、なんで私とあんたがデートしなきゃならないのよ』
『別にいいじゃん。どうせお前暇だし』

いちいち言葉に棘がある。
今に始まったことじゃないんだけど。

この間の時みたいに優しい顔をしたと思ったら、すぐに馬鹿にするみたいにおちょくったりして。
掴みどころがないというか、自由人というか。

空手してる時の匠刀は真面目でカッコいいのに。
本当に残念なやつ。

< 27 / 165 >

この作品をシェア

pagetop