『オーバーキル』一軍男子に脅かされています
幼い頃から両家で旅行に行ったり、食事をする仲だったから。
雑魚寝することもあったし、一緒にお風呂に入ったこともあるけど。
それは小学校2年くらいまでの話で。
成長するにつれ、少しずつ距離が離れていった気がする。
それでも、匠刀はいつも傍にいた。
友達ができない私を気にして、唯一の友達でいてくれたようなもの……だと思っていたけど。
「実はね、来週の誕生日にデートしようって誘われてて」
「何それ!!いつそんな話になったの?」
「先月の検診の日。心配で病院まで来てくれて。母親に『来月の誕生日に、一日連れ出してもいいか?』って聞いて来て。それで、その日の夕方に家の近くの公園の入口でキスされたの」
「うっっっわぁ~~っ、急展開すぎて、頭追い付かない!」
「……私も。もう3週間近くこの問題で悩まされてる」
「その状態で、よく期末試験乗り切ったね」
「でしょ?!私も自分を褒めたいよ」
期末試験の結果は、理系コースで4番。
うちのクラスで1番だった。
ちなみに、理系コースの1番はあいつらしい。
空手もできて、勉強もできるだなんて、ムカつく。
しかも、私のファーストキスまで奪いやがって。
「けど、いい機会なんじゃない?」
「え?」
「幼馴染くんのお兄さんを忘れるいい機会。彼女さん、凄くいい人なんでしょ?」
「……うん」
ケーキバイキングに誘って貰った日のことも報告済みで、あの日以来、毎週水曜日のお楽しみ撮影会はしなくなった。
まだ虎太くんのことは好きだけど。
あの日の匠刀の行動が、どうしても引っかかって。
私が好きなのは、虎太くんじゃなくて。
夏祭りの日に、気遣ってくれた人なんじゃないかと。
だから、それが匠刀だったのなら、私の好きな人は匠刀なんじゃないかと思えて。
いつだって一番最初に体調不良に気付いてくれるし。
いつだって一番傍で見守ってくれたのは、匠刀だ。