『オーバーキル』一軍男子に脅かされています

私からの言葉が意外だったのか。
匠刀にしては珍しく焦った顔をした。

「繋いでたら、私の体温で体調の変化にも気付けるでしょ」

こんなのは後からつけた理由だ。
本当は匠刀と手を繋いで、ドキドキするのか確かめたいだけ。

子供の頃はよく手も繋いだし、おんぶもして貰った。
遠い記憶のようだけど、まだ数年しか経ってない。

ぎこちなく繋がれた手。
この間の時も思ったけど、知らない間に男の人の手になってる。

ゴツゴツとした硬い手が、優しく私の手を絡めとる。

「誕生日だからって、気ぃ遣ってんの?」
「違うよっ」
「じゃあ、何?俺を好きなわけでもないのに」

チクっと突き刺さる言葉。
私が虎太くんをずっと想ってたことを知ってるから。

歩く速度も日陰を探して歩いてくれるのも、当たり前だと思ってたけど。
こういう行動ですら、本当は普通じゃないらしい。

『初デート』『初カレ』で昨日検索したら、こういう行動がピックアップされてた。
本来なら、好きな子に対してする行動らしい。



電車を使って辿り着いたのは、劇場だった。
私の好きな俳優さんが出演しているミュージカルで、今日がなんと初日の舞台だった。

「いつから用意してたの?」
「3カ月くらい前?」
「そんな前から?!」
「こうでもしなきゃ、お前、連れ出せねーだろ」
「……」

デートするのが目的だったのか。
私が好きな俳優のミュージカル観劇を誕生日プレゼントにしたかったのか。

宇宙人すぎて、匠刀の考えは全く読めない。

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