『オーバーキル』これ以上、甘やかさないで

コミカルな演技が売りの俳優だから、終始笑う箇所が散りばめられていて、あっという間の3時間弱だった。

「すごく面白かったね」
「3時間ってすげー長いと思ってたけど、あっという間なのな」
「それだけ観るのに集中してたんだよ」

休憩を挟んでの2部構成だったけど、本当にあっという間だった。
会場のエントランスホールで演者さんがお見送りしてくれている。

映画だとこういうのは無いから、感動もひとしおだ。

写真撮影OKということもあって、列に並んで大好きな俳優さんとツーショット写真を匠刀に撮って貰った。

「可愛く撮れてるっ」
「よかったな」
「ありがとっ」
「なっ……ばーか」

素直にお礼を口にしただけなのに。

幕が上がる前からドキドキが凄くて。
終わった今でもドキドキしてる。

心臓が悲鳴を上げるんじゃないかと、何十回も深呼吸したくらい、余韻がすごい。
それもこれも、匠刀のおかげだ。

「いっぱい笑ったら、小腹空いた。何か食べに行こ」
「おぅ。何食いたい?」
「う~ん、パフェみたいなやつ」
「パフェな」

名残惜しく劇場を後にすると、自然と繋がれる右手。
匠刀は右手で器用にスマホで近場のカフェを検索し始めた。

うん、ちゃんと感じる。
観劇のドキドキの余韻かも?とも思ったけど、やっぱりちょっと違う。
安心感のような、落ち着くような心地いい体温のぬくもりだ。

「ここなんてどう?今、5席空いてるみたいだから、予約したらすぐ座れそう」
「お任せするよ」
「んじゃあ、ここで」

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