『オーバーキル』これ以上、甘やかさないで

匠刀の愛が、ここまで重いだなんて思いもしなかった。

最初の数日は『愛されてるなぁ』と暢気に感じてたけど。
1週間が過ぎたあたりから、パワーアップというか、限度がないというか。

私のことを何でも知っていたいらしい。

いつだって飄々としていると思ってたのに。
実は脳内がドロドロになってただなんて。

だけど、これらを凌駕するほどの優しさの塊だと、私は知ってるから。

『タンパク質とカルシウムが足んねぇぞ』

昼休みになったのかな。
匠刀からお節介メールが届く。

『おやつ代わりに魚肉ソーセージ食べればいいんでしょ?』

私の体を気遣って言ってくれているのは分かるけど。
実の母親ですら、ここまで口煩くないのに。


お昼ご飯を済ませ、席を立とうとした、その時。

「あの」
「……はい」
「白修館の子だよね」
「……そうですけど」
「俺、N校の小川(おがわ) 架流(かける)って言うんだけど、友達になって貰えませんか?」
「……」

こういう時はどうしたらいいんだろう?
女の子だったら、とりあえずは連絡先交換するくらいで済むけど。

匠刀の了承なしに、勝手に連絡先教えるのも…。

「えっと、その……」
「あっ、全然怪しい者じゃないよ?白修館の野球部キャプテンが俺の兄で、他にも仲のいい子何人もいるし」
「……あ、はい」

白修館に友達がいるか、いないかはどうでもいい。
今、匠刀に電話入れるのもどうかと思うし。

本当に、どうしよう。
もとちゃん、助けてぇ……。

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