『オーバーキル』これ以上、甘やかさないで
「お昼の時は、……ごめんなさい」
「え?」
「お友達にと、言って下さったのに」
「そんな畏まらなくてもいいから」
「……」
「この雨の中、帰るの?」
「あ、はい」
「親が迎えに来てくれるんだね」
「え?……あ、いえ」
「ん?」
匠刀が迎えに来てくれるから。
濡れることは大して気にならない。
それよりも、雷の方が厄介だ。
まだ音は聞こえないから、雷自体は遠いはず。
だから、今のうちに家に帰りたい。
匠刀のことだから、傘も持たずに迎えに来たりしない。
口はぶっきらぼうだけど、結構用意周到な性格だから。
「あの、赤い傘なんて嫌かもしれないけど、良かったら…」
「え、それじゃあ、君が濡れちゃうじゃん」
「迎えが傘を持ってると思うので」
桃子は自身の傘を差し出す。
友達にはなれなくても、声をかけてくれたお礼代わりとして。
「小川の彼女?」
「美人な彼女じゃん」
「あ、いえ、私は…」
「お前らうるせぇ、素通りしてけ」
「何だよっ、見せびらかして」
「ごめんね、同じ高校の奴らで」
「……そうなんですね」
「彼女さん、こいつ、意外と手が早いから気を付けて」
「ッ?!お前らっ」
「話してるところ悪いけど、そいつの彼氏は俺なんで」
「ッ?!匠刀っ」
いつの間にか、私らの背後に匠刀がいた。
高校1年で175㎝くらいあったら結構長身な方だと思うけれど。
小川くんが小さく見えるほど、匠刀の鍛え抜かれた肉体は目を見張るものがある。
「えっ、彼氏がいたんだ」
「いちゃ悪い?桃子、浮気か?」
「違うよっ」