『オーバーキル』一軍男子に脅かされています
(匠刀視点)

午後の稽古をして、各自で基礎トレ時間に切り替わった。
筋トレ室を使うもあり、道場で稽古するのもあり。
真夏だからロードワークに出る人はいないけど、夏以外なら外周を走りに行く部員も結構いる。

俺はすかさずタオルで汗を拭きながら水分をとり、監督とコーチにバレないようにしてスマホをチェックする。

『N校男子から、友達になって欲しいと声かけられた』
『予鈴がなったから、その場から逃げれたけど』
『まだ、ちゃんと断れてない』
『どうしよう』
『彼氏がいるからって、ちゃんと伝えないとだよね?』

何だ、これ。
ナンパじゃん。
塾でナンパって流行ってんのか?

男女間で『友達』だなんて、99%くらいあり得ない。
大抵の奴らが、友達の先の関係を求めてるのに。

俺の桃子は、全然警戒心がなさすぎる。

親友の星川と俺以外は、会話らしい会話も難しいのは知ってるけど。
この手の誘いは、その場で断らなきゃ脈ありだと勘違いさせてしまう。

『緊張して言えなかった』『どうしていいのか分からなかった』『初めてのことで、パニクって』
男なんて生き物は、100%自分の都合のいい方に解釈する。

「チッ、ったく…」
「何なに、モモちゃんから?」
「……仮病使ったらバレるかな」

親友の有川(ありかわ) 晃司(こうじ)がスマホを覗き込んで来た。

学校は中学部から一緒だけど、俺の家の道場にも通ってて、結構小さい頃からつるんでる、一番の友達。
俺が桃子に片想いしてるのも知ってたし、付き合い始めたのも当然知ってて。
そんな俺を唯一理解してくれる貴重な奴。

「モモちゃん、可愛いもんなぁ」

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