『オーバーキル』一軍男子に脅かされています
晃司は空手で白修館に入学したから、俺と違って北棟の生徒。
だからこうして、空手の時か、一緒に遊ぶ時くらいになってしまったが、それでも一番仲のいいのは変わらない。
桃子からのメッセージを見た晃司が、俺の肩を『しゃーない、しゃーない』と言いながらポンポンと叩く。
桃子は昔から可愛いと評判で、体が弱いこともあって、どこか近寄りがたいような儚いイメージがあって距離を取られてしまうが。
実際は、男子の中でもダントツで人気だったりする。
目鼻立ちが整っていて、大人しいし。
ミステリアスな感じが、男心を擽る。
だから、邪な感情を抱いてる男連中をこの手で、バリケードを張って排除して来た。
高校生になって、最近妙に色気が出て来た桃子は、ますます人気が出て来た。
空手部でも、桃子のことを話してる奴らが出てくるほど。
兄貴と話してる桃子を見て、絶賛人気急上昇中。
塾の理系コースに通っているから、どうせ女子より男子の方が多いに決まってる。
あんな人形みたいに可愛い桃子なら、すぐに男連中の目に留まるだろう。
案の定、このメールだ。
「匠刀、夕立来そうだよ」
「あ?」
「空がいつの間にかすげー暗い」
「……ホントだ」
よし、兄貴に上手くかわして貰おう。
「ちょっと行って来る」
「行くって、どこに」
**
17時過ぎ。
道場を後にした俺は、急いでシャワーを浴びた。
部室のロッカーに置いてある傘を手にして、桃子が通っている塾を目指す。
俺が10年も前から桃子のことを一途に好きなことも。
俺の日常生活全てが、桃子のために費やされてることも、兄貴は知っている。