『オーバーキル』一軍男子に脅かされています

俺の独占欲であぁは言ったが、実際問題、桃子の気持ちを代弁したわけじゃない。
もしかしたら、『友達』というくくりで、もっと輪を広げたいと思ってるのだとしたら。
俺はその桃子の願いをへし折ったことになる。

「ううん、欲しいとは思ってないから大丈夫」
「嘘吐くなよ?」
「吐かないよ。連絡先を交換しても、やり取りするのも面倒だし、一緒にどこかに行くとするなら匠刀がいい」
「なっ…」

にこっと微笑む桃子。
俺に気を遣って返してくれた言葉だというのは分かってる。

年齢相応の子たちと同じような行動範囲が保てない桃子。

遊園地はダメだし、映画館もかなり危険。
ライブやコンサートも厳しくて。

買い物したり、動物園を回ったりするのも、小まめに休憩しないとならないし。
女の子同士で出掛けるのもかなり制限付きで嫌がられるのに。
団体行動となれば、それがあからさまになる。

だから、学校の校外学習も日帰りの所だけだし、修学旅行も断念して来た。
野外活動の川下りや山登りも当然欠席するしかなくて。

そんな桃子が、友達をつくっても一緒に楽しめることが少ないと気付いてしまったのが、小3の時。
それからの桃子は、一線を引いた友達付き合いをするようになった。

「あったかいもんでも飲んで帰るか?」
「うーん、お腹空いたからラーメン食べて帰ろう?」
「ラーメン?」
「うん、今の気分がラーメン♪」
「よし、旨そうなラーメン屋探すぞ」
「やったぁ」

俺はこいつの笑顔さえ見れればそれでいい。

「匠刀、ちょっと耳かして」
「あ?」

少し屈むようにして桃子の顔に耳を近づけた、次の瞬間。
頬に柔らかい感触と、チュッと可愛らしいリップ音が響いた。

「迎えに来てくれた、お礼ねっ」
「……ばーか、安売りすんなっつったろッ」
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