『オーバーキル』一軍男子に脅かされています
虎太くんはオリンピック初出場で銅メダルを獲得した。
本当に凄いよ、一気に雲の上の人になっちゃった。
スポーツ新聞、テレビ各局のスポーツコーナーに他のメダリスト達と出ずっぱりで。
商店街どころか、日本中が歓喜に湧く。
2学期が始まったら、学校中で人気者だろうな。
*
「匠刀くん、泊まってく?」
「はい?」
「お母さん、何言ってんの?」
父親は仲のいい商店街の人に何軒も電話して、虎太くんの銅メダルを祝いたいみたいで。
気付けは、院内が商店街の人で溢れてる。
まるで自分の息子みたいに。
匠刀の家は、商店街から一本裏の通りにあって。
桃子の家からは歩いて数分の距離。
同じ町内会のメンバーさん。
酔っ払いの人ばかりで。
母親がビールを注ぎに回りながら、匠刀に何故か耳打ちしてる。
「お母さん、何だって?」
「今日は特別に泊まって行っていいって」
「えっ?」
「なんか、両親の不在中、俺のことを頼まれてるみたいで」
「……だからって」
「ちゃんと節度を守れるなら、泊まっていいって言ってるから泊ってく」
「は?」
「一緒に風呂入るか?」
「節度守れてないじゃんっ」
「風呂もダメなのかよ」
「当たり前でしょっ!」
冗談だと分かっていても、同じ屋根の下に匠刀と一緒だなんて。
「もう遅いから先に休んでていいって」
「……それは分かるけど」
既に23時を過ぎようとしてて。
さすがにおじさん達の相手をするのも疲れたけど。
「ホントに泊まる気?」
「おぅ」
「着替えは?」
「桃子が風呂入ってる間に取りに行って来る」
「じゃあ、家で寝ればいいじゃんっ」
「そこは一緒に寝よーよじゃねーのかよ」
「私にそういうのを期待しないでって、何度も言ってるじゃん」
フェロモン垂れ流しのようなこの男を、同じ家の中で寝せてもいいのだろうか?