『オーバーキル』一軍男子に脅かされています

虎太くんはオリンピック初出場で銅メダルを獲得した。
本当に凄いよ、一気に雲の上の人になっちゃった。


スポーツ新聞、テレビ各局のスポーツコーナーに他のメダリスト達と出ずっぱりで。
商店街どころか、日本中が歓喜に湧く。

2学期が始まったら、学校中で人気者だろうな。



「匠刀くん、泊まってく?」
「はい?」
「お母さん、何言ってんの?」

父親は仲のいい商店街の人に何軒も電話して、虎太くんの銅メダルを祝いたいみたいで。
気付けは、院内が商店街の人で溢れてる。
まるで自分の息子みたいに。
匠刀の家は、商店街から一本裏の通りにあって。
桃子の家からは歩いて数分の距離。
同じ町内会のメンバーさん。


酔っ払いの人ばかりで。
母親がビールを注ぎに回りながら、匠刀に何故か耳打ちしてる。

「お母さん、何だって?」
「今日は特別に泊まって行っていいって」
「えっ?」
「なんか、両親の不在中、俺のことを頼まれてるみたいで」
「……だからって」
「ちゃんと節度を守れるなら、泊まっていいって言ってるから泊ってく」
「は?」
「一緒に風呂入るか?」
「節度守れてないじゃんっ」
「風呂もダメなのかよ」
「当たり前でしょっ!」

冗談だと分かっていても、同じ屋根の下に匠刀と一緒だなんて。

「もう遅いから先に休んでていいって」
「……それは分かるけど」

既に23時を過ぎようとしてて。
さすがにおじさん達の相手をするのも疲れたけど。

「ホントに泊まる気?」
「おぅ」
「着替えは?」
「桃子が風呂入ってる間に取りに行って来る」
「じゃあ、家で寝ればいいじゃんっ」
「そこは一緒に寝よーよじゃねーのかよ」
「私にそういうのを期待しないでって、何度も言ってるじゃん」

フェロモン垂れ流しのようなこの男を、同じ家の中で寝せてもいいのだろうか?

< 56 / 165 >

この作品をシェア

pagetop