『オーバーキル』一軍男子に脅かされています


「いいよ~、今の逆上っ」

公式戦じゃないから、部員達も応援の声を出し合ったりして、結構盛り上がっている。
オリンピックの時は、開始と同時にシーンと静まり返ったけど、それが緩和されてる感じ。

「逆上ってなんですか?」
「あ、今の逆上ね。スタンス的には基本利き足が後ろで、前に踏み込むのと同時に利き手で中段突きとかするんだけど。刻み込みっていって、フェイントみたいに前に踏み込むのをトントンッて2段込みが上段突きでバシバシッと左右繰り出されて、2発目の上段突きで有効の1pが決まったってことなんだけど…」
「……はぁ」
「えっとね、よく見ててね」

雫さんはその場で、今さっきの攻撃技を再現してくれた。

「2発目の上段突きが、軸足と逆になるから逆上って言われてて、中段突きなら逆突。同じ中段突きでも軸足と同じ側の手なら順突(おいづき)っていうの」
「すっ……ごぃですねっ」
「だよね。素早く逆上が決まるとカッコいいよね」

匠刀でも虎太くんでもない部員の試合だけど、本当にどの人も早くて。
ルールも殆ど分からない私は、ただ観ているしかできない。

時折、今みたいに雫さんが説明してくれて。
どんな技が決まったのか、何ポイント入ったのかとか、よく理解できる。


本当にすごいなぁ、雫さん。
総合特進コースを3年間1位をキープし、首席で卒業した雲の上のような人。

空手だけじゃなくて、水泳も体操とかも得意らしくて。
この間会った時に、匠刀の家の廊下で逆立ちしてくれた。

私には無いものをたくさん持っている人。

「あっ、次、匠刀くんの出番だね」
「ホント?」
「ほら、準備してる」

ウォーミングアップなのか、ぴょんぴょん跳ねて、首をぐるりと回してる。

個人20連戦みたいで、匠刀はちょうど10番目だ。
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