『オーバーキル』一軍男子に脅かされています
(匠刀視点)

「寒くないか?」
「大丈夫」

久しぶりのデートを満喫し、暗くなる前にテーマパークを後にした。
帰りの電車を待つ間、駅のホームで北風をシャットアウト。

10月に入ったあたりから、少しずつ風が冷たくなって来た。
冬がすぐそこまで来てるらしい。

桃子が体調不良になったあの日。
主治医の先生から注意点を紙に書いて貰った。

それを縮小コピーして、折り畳んで財布に入れてある。
原本は自宅の机の引き出しに。

寒さ、暑さも注意が必要だけれど、それよりもストレスが一番の負担になる。
だから桃子が、無理することがないように、常に注意して。

「なぁ」
「ちゅーはダメだよ」
「まだ何も言ってねーじゃん」
「こういう時に聞くことってそれくらいじゃん」

こういうやり取りも、俺らならでは。

「ぎゅーしていい?」
「えー」
「いいじゃん、電車来るまで。その方があったかい」
「……じゃあ」

ステンカラーコートの中に桃子を閉じ込める。

ホントにいつ抱きしめても折れてしまいそうなほど華奢な体。
むくみやすくて太りやすいからと、体重増加を気にしすぎてる。

医師の注意書には、体重増加とあったが、その前に『急激な』と書いてあった。
だから、少しくらいの増減なら問題ないらしい。

生理の時なら2~3kgの増減は普通らしい。
だから、急激なというのはもっと明らかに分かるくらいの10kgくらいを示しているのだとか。

10kgも増えたら、さすがにこうして抱きしめたら分かるだろ。

「もう少し体重増やしていいって」
「ホントに?」
「なさすぎると、体力つかなくて返って毒だぞ」
「……そうなんだぁ」
「それと、もう少し運動もいいって」
「……うん」
「少しずつ体力つけような」
「うん」

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