『オーバーキル』一軍男子に脅かされています

「ねぇ、あそこ寄ってこ」
「……プリクラ?」
「うん」

何気に初だな。
桃子とプリクラすんの。
っつーか、男同士じゃ罰ゲームでしか撮らねぇ。

地元の駅に到着し、近くのプリ機専門店へと。

「星川とよく来んの?」
「最近はあんまり。前はよく来たけど」
「へぇ」

桃子は自身のスマホで何やら入力中。

「メール?」
「ううん」
「何、打ってんの?」

さっきから話しかけてんのに、一向に視線が合わねぇ。

「できた!」

やっと視線を持ち上げた桃子は、めちゃくちゃ可愛い顔で『見てみて~』とスマホの画面をぐいっと突き上げて来て、視界から可愛い桃子が消えた。
やっと視界に顔が映ったっつーのに。

「ん?」

顔の前突き出して来たスマホ画面に焦点を合わせて見ると。

「もしかして、撮るポーズ?」
「ビンゴ!」

ハグ、おんぶ、おでこにちゅー、2人の指で指ハート。
どれもカップルならではのポーズか。

「空いてたら、何台か撮ってもいい?」
「……ん」
「匠刀、ダメって言わないんだね」
「あ?」
「断ったり、拒否したりしないじゃん」
「して欲しいの?」
「そうじゃなくて。……我慢させたり、無理させたりしたくない」
「それは俺も同じだって」
「じゃあ、我慢しないで何でも言ってね?」
「言っていいの?」
「おふざけのちゅーとかぎゅーとかは無しだよ?」

人目がある所でおねだりすると拒否られる。
だけどあの日以来、人気のない所だったら、少しずつ俺を受け入れようとしてくれている。

たぶん、あの医師のアドバイスもあってのことだと思うけど。

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