『オーバーキル』一軍男子に脅かされています
心無い言葉と抉られる思い

「桃子、本当に学校まで歩いて行くつもりなの?」
「うん」

11月下旬の日曜日。
今日は自宅から白修館高校まで、頑張って自分の足で歩くつもり。

匠刀は主治医の財前先生から『筋力UP計画』なるものを教わったらしくて。
今まで避けて来た出来事や、細心の注意を払って維持して来たことを、この機会に見直そうというものだった。

テーマパークでデートをした翌日から、部活から帰宅したばかりの匠刀に付き添って貰って、毎日少しずつ距離を伸ばしながら本格的なウォーキングを始めた。

そして今日、初めて電車もバスも使わずに、自力で学校へ行く。

「大丈夫ですよ、俺が付いてるんで」
「帰りは電車で帰って来るのよ?」
「分かってるって」
「本当に桃子のこと、よろしくね」
「任せて下さい」

ウォーキングのために買ったウェア。
匠刀が好きなブランドのレディースカラーにした。
さりげなく、似たような格好をしたくて。

「まるで夫婦だな」
「お父さん、そこはベストカップルって言ってよっ」
「あぁ、そうか、そうだな」

リンクコーデのことを言ってるのだろう。

普段の私は自宅でジャージを着ることがなかったから。
匠刀と同じ物を持つのは、学校の制服や体操服くらいしかなかった。

初めてお揃いの物を手にしたのは、あのデートの時に買ったキャップだ。

玄関でスニーカーの靴紐を結んでくれる匠刀。
昔からこうして、何でも世話を焼いてくれた。

『俺がしてやる』

おままごともお人形遊びも、一緒に遊んでくれる友達がいなくて。
いつも匠刀が遊びに付き合ってくれた。

当たり前のように思っていたこういうこと1つ1つが、全て彼の努力のおかげなんだと、最近になって初めて知った。

私には勿体ないほど、できた彼氏だ。
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