『オーバーキル』一軍男子に脅かされています

自宅から高校までの距離は直線で4㎞ほど。

いつもは自宅から最寄り駅まで歩いて5分。
地下鉄で3駅。
駅から高校の正門まで10分ほど歩いて通っているけれど。
カタカナの『コ』のような経路なため、本当はちょっと非効率だった。

自宅の最寄り駅と高校の正門前にバス停があるが、なぜか運悪く、運航の順路がひらがなの『し』みたいになっていて。
1時間以上乗らなくてはならない。

自転車に乗って通えれば楽なんだけど。
小学校低学年の頃は寝たきり状態も多くて、自転車に乗る練習すら出来なかった。

周りの子たちがあっという間に乗れるようになって。
気付けば、小学校高学年。

両親は転倒時の危険を心配していたし、今さら感もあって、人目を気にしてしまって練習する事自体を断念した。

直線距離は4㎞でも、実際は坂や階段もある。
だから、自宅から歩いて行こうだなんて考えたことも無かった。

心臓病を抱える人にとって、運動は欠かせない。
ただ、その運動量があまり明確でなくて。
運動処方と呼ばれるものもあるらしい。

私は匠刀から教わるまで、そんなものがあることすら知らなくて。
無知って怖いなと改めて思った。

鍼灸院の駐車場の一角でウォーミングアップのストレッチをする。

今まで1人でウォーキングしてた時は、ストレッチもせずにただひたすら歩くだけだった。
そういうこと1つ1つが間違っていたらしい。

「桃子、ちゃんと自分の筋肉が伸びるのを意識して、腹式呼吸を忘れんな」
「……うん」
「1、2、3、4、……1、2、3、4」

匠刀の教え方は凄く分かりやすい。
体育の先生が似合いそう。
< 77 / 165 >

この作品をシェア

pagetop