『オーバーキル』これ以上、甘やかさないで
昼休み。
素子と学食があるテラスへと向かう。
「モモ、お腹の具合、どう?」
「……うん、大丈夫。保健室でカイロ貰って貼ってからは、だいぶ良くなった」
「今日は温かいものにしよう」
「……ん」
昨日から生理が来てしまい、今朝は生理痛で朝ご飯も殆ど食べれなかった。
「モモ、何にする?」
「きつねうどんにしようかな」
「じゃあ、あたしも同じものにする」
うちの高校はセレブ校だなんて言われるけれど、学食はびっくりするくらい激安。
南棟の学食メニューしか知らないが、もとちゃんが言うには、北棟のメニューはデカ盛りで激安だという。
天丼250円、日替わりランチ300円。
きつねうどんなら180円と、立ち食い蕎麦より安い。
どこぞの大企業が毎年多額の寄付をしてくれているお陰で、校舎も綺麗だし、カリキュラム自体もかなり充実している。
「たくとぉ、一緒にご飯食べよ~」
猫なで声のような甘ったるい声が聞こえて来た。
テラスの入口にあいつがいる。
匠刀は兄の虎太郎と同じように空手をしていて、地域でもかなり有名な一家だ。
オリンピックに出場できるだけでも凄いのに、彼の父親は金メダリスト。
だから、津田道場と言えば、大抵の人が知っている。
兄と同じようにスポーツ特進科に入るとばかり思っていたら、入学式当日、何故か普通科(南棟)のクラス表に匠刀の名前があった。
幼い頃から要領がよくて、スポーツも勉強も何でも簡単に出来てしまう。
挙句の果てには、女の子をメロメロにする甘いマスク。
最近は色気が出てきたのか、上級生や他校の女子をもはべらかせていると噂だ。