『オーバーキル』一軍男子に脅かされています
週明けの月曜日。
いつものように8時前に自宅を出て、学校へと向かう。
もとちゃんとは路線が違うため、駅で待ち合わせして高校へと一緒に歩いて行っている。
昨日の『学校チャレンジ』(=自宅から徒歩で学校まで行く計画)が無事に成功したことを話すと。
薄っすら涙目になりながら、よく頑張ったと褒めてくれた。
正門をくぐり、正面玄関へと向かっていると。
南棟の制服を着た女の子が、睨みつけるような鋭い視線を向けて仁王立ちしてる。
眉間に深いしわが刻まれ、可愛い顔が台無しだ。
「仲村さん、ちょっといい?」
「……何ですか?」
「ついてきて」
「モモ」
「……大丈夫、先行ってて」
こういうの、ドラマでよく観るやつだ。
どうせ、匠刀のことが好きな子だろう。
足が止まったのは、北棟と連結している長廊下の2階の端。
この時間はまだ授業がないから、人気がない。
「津田くんの彼女だってのは知ってるけど、彼のこと、ちゃんと考えたことある?」
「……え」
『別れて』『私の方が先に好きになった』『私も彼が好きだから』
彼女が言いそうな言葉を考えていたら、予想もしない言葉だった。
「津田くんの学力なら、総合特進コースでもトップ3に入るくらいだって知ってた?」
「へ?」
「知らないの?……幼馴染なのに?」
「っ……」
名前も知らない子から、遠慮ない言葉が浴びせられる。
運動も勉強もできるとは知ってるけど、中学部から一度も同じクラスになったことがなくて、本当のところは分からない。
理系コースで1位なのは知ってても、実際の学力の物差しにはならないよね。