『オーバーキル』一軍男子に脅かされています

「私、津田くんと中学3年間一緒のクラスだったんだけど」

勝ち誇ったような、自信に満ち溢れた目だ。

「彼、仲村さん(あなた)のためにわざわざ落としたクラスにいるんだよ」
「っ…」
「仲村さんも知ってるでしょ?2年に上がる時にコース変更できること」
「……ん」
「今ならまだ間に合うから、総合特進を勧めたら?」
「……」
「私はてっきり北棟のスポーツ特進に進学すると思ってたけど、まさかの普通科。それも総合特進じゃなくて理系って」
「……」
「来年度のクラス編成の進路希望調査の紙にも、『理系』って書いてあった」
「……」
「別に、彼と別れてだなんて言わないから安心して」
「……」
「ただ、彼のことをちゃんと思ってるなら、将来の選択肢を狭めるようなことはしないで」
「っ……」

私の知らない匠刀を知ってる。
それも、私よりもちゃんと匠刀のことを考えてる子だ。
けど、どこで匠刀の進路希望調査の紙を見たんだろう?

匠刀が虎太くんほど、空手に熱量がないのはこの間聞いたから知ってるけど。
それとクラスの問題は別物だ。

匠刀のことだから、私の傍にいるために普通科を受験して、理系コースを選んだのだろう。

ちょっと前までは、何でだろう?くらいにしか思わなかったが。
この目の前の子に言われて、やっと気づいた。

空手も、高校も、コースも。
何もかも全てが、私に合わせてるのだと。

優しいのは分かってたけど。
優しいなんてレベルじゃない。

「心臓に、……病気を抱えてるらしいけど」
「っっ……」
「彼女でいることと、学校で勉強するのとは別なんじゃないの?」
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