『オーバーキル』一軍男子に脅かされています

知佳(ちか)っ、もう予鈴なるよ」
「分かった」

声をかけに来た友達に返事した彼女(知佳さん)は、間を詰めるように一歩近づいた。

「大して取り柄もないのに、幼馴染っていうだけで、あんなイケメンを彼氏にできて羨ましい」
「っ…」

どう?と、言わんばかりの膨らみ。
ブレザーの襟が胸に押し出されて広がってる。

そして、容赦ない視線が私の胸元へと落とされた。

「腕立て伏せすると、美乳になるよ。……って、仲村さんには無理か」
「っ」

試合終了を知らせるかのような予鈴が鳴る。

「朝の忙しい時間に悪かったわね。体、お大事にね」

フンッと鼻を鳴らしながら踵を返した彼女は、言いたいことだけ言って去って行った。

ありがたい。
匠刀のおかげだ。

前だったら、こんな風に言われただけで痛みと息苦しさがあったはずなのに。
筋力アップと呼吸法のおかげかな。

重い感じはあるけど、痛みはない。

「教室に行かなきゃ…」



「桃子っ」
「……おはよ」
「顔色悪いぞ」
「……大丈夫だよ」

教室の前で匠刀が立っていた。
顔色の変化にも鋭い匠刀は、すぐさま私の手首の脈を取る。

「本当に何ともないって」
「黙ってろ」

大丈夫、動悸は起きてない。
ウォーキング効果もあって、歩きながら呼吸を整える方法が身についてるおかげで、不整脈にはなってないはず。

「……脈は大丈夫そうだな」
「だから、大丈夫だって言ってるじゃん」
「具合悪くなったら連絡しろ」
「あーはいはい、わかったわかった」

ごめんね、匠刀。
また心配かけちゃったね。
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