『オーバーキル』一軍男子に脅かされています

本鈴が鳴る直前に桃子が姿を現した。

何があったんだよ。
すげぇ顔色悪いじゃん。

脈を確認したが、脈自体は問題ない。

問い詰めたところで、すんなり吐くような奴じゃない。
それどころか『しつこい』ってキレられて、口を聞いて貰えなくなる確率の方が高い。

こういう時は、少しインターバルを置いて様子をみるしかない。

この時間がもどかしい。
何もしてやれないことに腹立たしくて。

『彼氏』になった今も、昔と何も変わってないことに打ちのめされる。



『拉致った奴、見かけたら撮って送って』

星川にメールを送る。

女だろうが、容赦しねぇ。
桃子を苦しめる奴は、十倍返ししないと。

**

「こんばんは」
「こんばんは~、奥のベッドが空いてるからね~」
「あ、はい。……あの、桃子は?」
「あれ?聞いてない?素子ちゃんの家に泊まりに行ったわよ?」
「え?」

部活を終え、帰宅してすぐに父親と兄貴と一緒に仲村 鍼灸院に来ている。

筋肉が疲労すると血流量が減退するため、栄養素が全身に循環しづらくなる。
パフォーマンスの低下にも繋がるし、骨や筋などにも影響を及ぼす。

だから、筋肉疲労が蓄積する前に、小まめに手入れを施し、常に高いパフォーマンスを維持できるようにと、整体マッサージや鍼灸などの施術を取り入れている。

桃子が俺に一言もなく、星川の家に泊まりに行った。
今朝のが原因なのは明らかだが、メールや電話で聞いたところですんなりと話してはくれないだろう。

桃子は、桃子なりに考えがあってしているのだろうから。
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