『オーバーキル』一軍男子に脅かされています


「桃子、本当に病院に行かなくていいの?」
「……大丈夫だよ」
「気分悪くなったらすぐに呼ぶのよ?」
「分かってるって」

今日もずる休みをしてしまった。

もとちゃんの家に2泊させて貰って、その翌日から学校を休んで今日で3日目。
高校に入学して初めて親にわがままを言った。

『暫く、学校を休ませて』

体のいい言葉で言ったら、『身の振り方を考える』だけど。
そんないい響きのものじゃない。

匠刀やもとちゃんからの電話もメールも無視するみたいに、完全に電源を切った状態で部屋に籠ってる。

私が匠刀に会いたくないのを両親も察してくれて。
匠刀が部活帰りで家に来ても、家には入れずに帰るように説得してくれてるみたい。

もう3日目だから、たぶん今日あたりが限界だと思う。
あいつのことだから、無理やり上がり込んで来そう。

かたつむりみたいに殻に籠って考えてみたけれど。
匠刀への気持ちは何一つ変わらなかった。

ううん、考えれば考えるほど、『好き』という気持ちが膨らんで。
だからこそ余計に、匠刀に気持ちを伝える勇気が欲しい。

ちゃんと伝えなきゃ後悔すると分かってるから。
今はその勇気が満タンになるのを待ってるようなものだ。

アルバムを捲って、匠刀との想い出を思い返す。

私の過去には、いつだって匠刀が傍にいてくれて。
いつでも温かい手が差し伸べられていた。

桃子(とうこ)

両親以外で『とうこ』と呼ぶのは匠刀だけ。

何の疑いもなく当たり前のようになっていたけれど。
3日前に、もとちゃんに言われて初めて知った。

『あいつ、桃子(とうこ)だけど、“とうこ”と呼んでいいのは俺だけだから、星川も“モモ”って呼んで』

初めて会話した日に、そう匠刀から言われたらしい。
< 86 / 165 >

この作品をシェア

pagetop