『オーバーキル』一軍男子に脅かされています
「しっかり掴まってろ」
「ん」
虎太くんの自転車に二人乗り。
前にも乗せて貰ったことがあるけど、振動が心配なのか、いつからか乗せてくれなくなった。
だけど、この間の主治医からの注意書のこともあってか。
今日は躊躇うことなく乗せてくれた。
何年振りかの二人乗り。
匠刀の背中は知らぬ間にすごく大きくなってて。
前はちょこっと顔をずらしただけで前が見えたのに。
今は匠刀の背中しか見えない。
それに、あたたかい。
「匠刀~」
「ん~?」
「匠刀の家に行きたーい」
「俺んち?」
「……うん」
当然のように私の自宅へと向かって運転する彼。
私の言葉が意外だったのか。
ちらりと一瞬振り返った。
ごめんね。
匠刀との時間をゆっくり過ごしたくて。
虎太くんに家を空けて貰えるように頼んだんだ。
匠刀の両親がちょうどジュニアの地区大会で不在だって虎太くんから聞いたから。
二人きりにして貰えるように頼んだの。
「俺んち、今日親いねーよ?」
「そうなの?」
知ってるよ。
だからだよ。
「桃子、飯食った?」
「まだ」
「じゃあ、何か食って帰る~?」
「ラーメン食べたいっ」
「お前、ラーメン好きだよな」
「だって、うちの食卓にラーメン殆ど出て来ないんだもん」
うどんや蕎麦は出てくるけど、ラーメンは何故か数か月に1回くらいしか出て来ない。
塩分が多いからと、カップラーメンは食べちゃダメと言われてて。
もとちゃんや匠刀と、遊びに行く時くらいしか食べれないんだもん。
「駅裏に旨いラーメン屋あるらしいから、そこ行くか」
「行く行く~っ!!」