『オーバーキル』一軍男子に脅かされています
(匠刀視点)

土曜の休みの日に、部活が半日あることを知ってる桃子が、わざわざ学校まで迎えに来てくれた。

5日ぶりに会話した桃子は、ちょっと申し訳なさそうな顔をしながらも、ちゃんと俺の目を真っすぐと見てくれた。

桃子のリクエストでラーメン屋で昼食を済ませ、兄貴のチャリで自宅へと向かう。

俺の腹部へと回された手。
昔よりしっかり掴めるようになってることに気付く。

前は少しの揺れで、掴んでる手が外れるんじゃないかと気が気がじゃなくて。
心臓への振動も気になって、できるだけ段差の無さそうな場所しか走れなかったけれど。

ここ1カ月半くらいの特訓の成果もあって、だいぶ体力がついたみたいだ。
それがこの上なく嬉しくて。
ついつい顔が緩んでしまう。

ジュニアの空手の試合(地域の小さなもの)があって、朝から両親が不在。
兄貴も彼女とデートだって言ってたし。
久しぶりに桃子とゆっくり過ごせることにも嬉しさが込み上げてくる。



帰宅してすぐに部屋を暖めて、桃子とキッチンでお茶の用意をする。

「何飲む?」
「何にしようかな…」

引き出しを開けて吟味する桃子。
見慣れぬ包みを手にして、何味なのかチェックしてる。

「抹茶オレがある。珍しいね」
「あーそれ、兄貴の彼女が買って来たみたい」
「やっぱりね!津田家の趣味じゃないもんね」

うちの母親は珈琲、紅茶は色んなメーカーのを買うけど。
オレ系のものは殆ど買ったことがない。

そんなコアなネタも知り尽くしてる桃子は、兄貴の彼女が買って来た抹茶オレを飲むらしい。
微笑みながらカップに投入した。
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