『オーバーキル』一軍男子に脅かされています

「この部屋、暑くない?」
「寒いよりマシだろ」
「エアコンか、カーペットか、どっちか切ろうよ」

桃子が寒くないようにと、エアコンも電気カーペットもオイルヒーターも付けてある。
さすがに暑いとクレームを出して来た。

「匠刀、汗掻いてんじゃんっ」

桃子仕様にしたからだろ。
俺の筋肉量なめんなよ。

エアコンのリモコンを手にして速攻で切った桃子は、窓を開閉して空気を入れ替え始めた。

「そんなに気を遣わなくても、昔みたいに寝込んだりしないから大丈夫だよ」
「……っんなの、わかんねーじゃん」

桃子が5歳の時。
風邪のウイルスが心臓にまで入ってしまって、心筋炎になった。
それが原因で今でも生活に負担がかかってるのに。

風邪を甘く見んじゃねぇ。
次また心臓にウイルスが入ったらアウトじゃねーか。

俺はお前を失うことだけは、ごめんだからな。
それだけは絶対に譲れねぇ。

帰りがけに寄ったコンビニで買った雑誌を見てる桃子。
時折ページを折ってる。

「クリスマス特集やってんだけど、匠刀、この中ならどこがいい?」

イルミネーションやイベント情報が纏められてて、桃子はその中から幾つかをピックアップしてる。

「こことか、……ここら辺?」
「ここなら、プラネタリウムも近くていいかも♪」
「じゃあ、ここにするか」
「うん!楽しみだね♪」

5日も放置されたから、このまま年末年始まで無視されるかと思ってた。
付き合うようになって初めて迎えるクリスマスだけれど。
そんなことはどうでもいいと思えるくらい、内心焦っていた。

『別れたい』『距離を置こう』『友達に戻りたい』
そう言われる気がして。
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