『オーバーキル』一軍男子に脅かされています
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「何これ~?!耳かき?」
「あ、そう。……兄貴がこの間、彼女とガラス工房に行って来たみたいで、その土産」

瑠璃色のトンボ玉が付いてる耳かきがペン立てにさしてあって、それが目に入ったようだ。

「耳かき、してあげようか」
「は?」
「結構得意だよ?」
「……誰かにしたことあんのかよ」
「フフッ、あるよ~」

マジで?
いつ?
どこで?
誰に??

耳かきを手にした桃子は、カーペットの上に座り、膝の上をトントンと叩いた。

「今なら無料だよ~」
「っ……」

何だよ、それ。

「もれなく、膝枕がついて来ます」
「フッ」

久しぶりの膝枕だ。
夏の終わりに部屋でゴロゴロした時にして貰ったっけ。

細くて華奢な足。
セーターから柔軟剤のすっげぇいい匂いがする。

桃子の足に頭を乗せると、そっと髪が横に流されて。
遠慮がちに耳朶が抓まれる。

「さっきの話だけど、誰にしたことあんの?」
「え?……あぁ、耳かきのこと?」
「ん」

嫉妬すんのは当たり前。
お前の全部が俺のもんなのに。
俺の知らない桃子がいんのは、すげぇ腹立つ。

「お父さんだよ」
「あ」
「耳かきしたら、1回100円貰えたから、お小遣い稼ぎでよくしてたの」
「……なるほどな」

得意だというだけあって、すげぇ気持ちいい。
痛みは全くない。
それどころか、めちゃくちゃピンポイントで絶妙な場所を掻いてくれる。

桃子に、こんな特技があったとはな。

「匠刀の耳って、形がいいよね」
「そうか?」
「うん、綺麗な形してるよ」
「耳だけ?」
「顔もね」
「だよな~」
「あーはいはい、匠刀様はイケメンですよ~」
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