『オーバーキル』一軍男子に脅かされています
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匠刀の家に来て、もう3時間が経過した。

ご両親がいつ帰って来るか、分からないし。
虎太くんだって、夕食の頃になったら帰って来るよね。

特別何かをしようとか、あるわけじゃないけれど。

溢れ出すほどの、この想いはちゃんと伝えたい。

クリスマスデートによさそうな場所を検索してる匠刀。
ノートパソコンと睨めっこして、幾つかメモしてる。

そんな彼に背後から抱きついた。

「おっ、……どうした?」
「パソコンに嫉妬してんの」
「フッ、かわいいこと言うな」
「だって、全然こっち見ないんだもん」

マウスから手を離した彼は、上半身を少し捻った。

「じゃあ、ここ座って」
「えっ」
「一応、VIP席なんだけど?」
「それって無料なの?」
「今なら特別に無料キャンペーン中」
「……じゃあ、座る」
「どうぞ~」

胡坐を掻いてる脚の上にちょこんと座る。
匠刀の吐息が頬にかかるくらい凄く近い。

「なぁ」
「……ん?」
「ちゅーしたい」
「匠刀が『なぁ』っていう時、そればっか」
「いいじゃん、彼氏なんだから、ちゅーくらい。ってか、嫌なのかよ」
「……別に、嫌じゃないけど」
「じゃあ、こっち向けよ」

顔を寄せた彼が、耳元で甘えてくる。

私だって、ちゅーしたいよ。
ううん、ちゅーだけじゃなくて、その先だってしたいのに。

優しく重なる唇。

喧嘩でもないのに、5日も無視したのに。
そんなこと、なかったことにしてくれるほどの蕩けるような甘いキスが降って来る。

「……もっと」
「なっ、……ばーか」
「もっとぉ~っ」
「っっ……安売りすんなっつったろッ」

唇が離れて、匠刀が顔を逸らしたからじゃん。
今は私だけを見てて欲しいんだもん。
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