『オーバーキル』一軍男子に脅かされています
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ちゅっじゃなくて、結構濃厚なちゅーもしたのに。
匠刀は私の心臓が心配みたい。
雰囲気に流されることなく、踏みとどまった。

そういう人だよね、匠刀は。
いつだって私のことを最優先に考えてくれる。

だけどそれが、今は一番辛いよ。

私のために、無限に広がる可能性を狭めて。
予め決められてるルートでしか進めないみたいで。

優しい匠刀が好きだけど。
もっと強引で無鉄砲な匠刀でもいいんだよ。

私がまた我慢させたみたいで、心が苦しくなるんだよ。

もっとわがまま言っていいし。
いっぱい甘えてくれていいのに。

そういうことをさせない何かを私が発してるんだろうな。

私が、どこにでもいる健康的な女子高生だったら。
匠刀は我慢も無理もしなくて済むのに。

膝の上に置かれた彼の手にそっと手を重ねる。
ごつごつとして、大きな、男の子の手。

その手を持ち上げて、自分の胸にそっと当てた。

「おっ……ぃ、桃子」
「触っていいんだよ?……彼氏なんだから」
「っ…」

触り心地悪いよね。
ちっちゃくてぺたんこだし。
でも、これでもだいぶ成長したんだよ。

セーター越しに伝わる、匠刀の手の体温。
すごく熱い。
私のドキドキが伝わってるんじゃないかな。

「苦しくねーの?」
「……大丈夫だよ」
「すっげぇ早ぇーぞ」
「……ん」

やっぱり。
私の鼓動を確認したんだ。
そりゃそうだよね。

胸の大きさより、そっちの方が気になるよね。
私が普通じゃないから。

「無理しなくていいから」
「……してないよ」

一応、ぺたんこでも、女の子なんだよ、匠刀。
恥ずかしいし、恥ずかしいし、恥ずかしいの。
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