『オーバーキル』一軍男子に脅かされています

（匠刀視点）

初めて触った桃子の胸は、思ってた以上に柔らかくて。
俺がジョギングしてる時くらいの鼓動の速さだった。

暫くじっと手を添えたままで、手に伝わって来る拍動を読む。

大丈夫。
不整脈じゃない。

夢に出てくるほど聞き倒した不整脈動画。
不整脈といっても症状は様々。

遅くなるのもあるし、早くなるのもあるし、乱れる不整脈もある。
ここ数年、暇さえあれば医療系動画や書籍を見漁って、得れる情報は上限なく刷り込んで来た。

顔色、発汗、呼吸、体温。
心音や脈だけでなく、ありとあらゆる情報がキャッチできれば、桃子が苦しむ時間が少なくて済むから。


本人は口癖のように『色気がなくてごめんね』と自分を卑下してるけど。
実際は、ちゃんと色気もあるし。

同級生だけでなく、空手部の奴らでさえ、エロい目で見てる。
人の彼女を目で犯すな、いつも心に思うほどだ。

「無理しなくていいから」
「……してないよ」

今日の桃子は少し変だ。
５日も放置したのを気にしてるのか？

なんか、埋め合わせしようとしてるみたいで、痛々しい。

手を離そうとすると、俺の手の上からぎゅっと押さえつけて来る。
もういいのに。

「桃子？」
「ちゃんと触ってよ」
「っ……」

手を当てたくらいじゃダメらしい。
どれくらいなら、満足すんだよ。

お前の満足の度合いと、俺の理性の限界は同じじゃねーぞ。

もしかして、揉め、的な意味合い？
さすがにそれは……。

恥ずかしさと申し訳なさと、不安を天秤にかけてんだろうな。
手が震えてんじゃん。

俺は桃子にとって、一番安心できる場所になりたいだけなのに。