君と乗り越えた時
すっかり眠気が覚めてしまって、二人で水族館に行った時に買ったペンギンのぬいぐるみを抱きしめながらベッドにゴロンと寝転がった。
机においてある翔真のスマホは、相変わらず、ブーッとうるさくて。
…でも、もうサークルはやめたなら、そんなに心配することもないよね。
自分の中でそう言い聞かせて、翔真がシャワーから出てくるのを待つ。
すぐにシャワーを出てきた翔真は、私のいるベッドに入ってきた。
さっきまでついていたお酒の匂いも香水の匂いも消えて、私と同じ匂いになった翔真に、何も言わずにぎゅっと抱きついた。
そんな私の頭を撫でて、額にキスした翔真は、私の目を見て、なぜか切なげに笑った。
「ねえ、これだけは覚えておいて。今も、今までも、この先の未来も、俺は莉乃しか愛したことはないし愛せない。」
「……え?」
「俺には莉乃しかいないから。他の誰に何を言われても、俺の言葉だけは信じてほしい。」
いつもより弱々しい声でそう話した彼だけど、私を見つめる目だけは真っ直ぐだった。