君と乗り越えた時
翔真の隣に立つと、なんだか違和感を感じた。
それはほんの一瞬だけど、ふわりと鼻を掠めた甘い香水の匂い。
その匂いは前にも嗅いだことのある匂いで、なんとなく嫌な予感がして、胸がザワザワした。
「あの、さ。」
「あ、うん、なに?」
翔真は少しいつもより声のトーンを下げて話はしめた。
「航には、気をつけて。あんまり仲良くならないで欲しい。」
「え?航くん?」
何を言われるのかと身構えていると、予想をしていなかった話になって驚いてしまった。
「ケーキ屋さんに来てくれるくらいで、他に関わることもないから大丈夫だよ?」
「ならいいんだけど…。あ、別に嫉妬とかで言ってるわけじゃないからね?」
そう言いながらも翔真は繋いだ手を離して、ぐいっと私の腰に手を回し距離を縮めてきた。