君と乗り越えた時
女の子は駆け寄ってきて、やっと私のことを視界にいれると、にこっと笑い、すぐさま翔真に視線を戻した。
上目遣いで可愛く笑うその視線を見ただけで分かってしまった。
この子は、翔真が好きなんだって。
「何の用?」
「昨日、翔真くんの家にハンカチを忘れて行ったから、取りに来たんだ〜。」
「……え?」
その女の子から発せられた言葉に、先に反応してしまったのは私。
そんな私の顔を見て、女の子は嬉しそうに口角をあげて笑っていて、代わりに翔真は眉間に眉を寄せて困った顔をしていた。
「そんなわけないでしょ。たしかにうちに押しかけてきたけど、中には上がっていないんだから。そうやって俺らの仲を悪くしようとしても無駄。」
すぐに翔真から出てきた言葉は、昨日の状況を説明するものではあったけど、なんだか急いで考えた言い訳のように思えてしまった。
「彼女さんにバレたくないからって、そんな嘘ついたらダメじゃない?今から翔真くんのお家に行こうよ。ハンカチあるはずだよ?」
「……、」
そう返された翔真は黙り込んでしまって、私は今、初めて翔真に嘘をつかれたんだって理解をして悲しくなってしまった。