君と乗り越えた時
「どっちの言っていることが本当?」
「…家にはあげてない。無理矢理入られて、玄関で話しただけ。ハンカチだってわざと落として行った。だから玄関にはたしかにこの子のハンカチは置いてあるよ。」
「…っ、最近ずっと忙しかったのは、この子といたから?」
翔真の言っていることを信じたいのに、少しだけ信じきれていない自分がいて、そんな気持ちから震えてしまった声は、翔真に届いたのかもわからない。
言葉を投げておいて返事を聞くのが怖かった私は、そのまま後ろを向いて自分の家の方向に歩き出した。
「待って…!」
歩き出した私の腕を掴み、そう声をあげたのはボブの女の子。
「あなたは翔真くんの秘密、知ってるの?」
「ひ、みつ?」
「翔真くんと、結衣ちゃん。」
こそっと耳元で囁かれたのは、予想もしていなかった組み合わせの名前。