君と乗り越えた時
「昨日、翔真くんの家にいて、一緒にいたのは誰だろうね?」
ふふ、っと楽しそうに笑うと、じゃあね、と翔真に声をかけて女の子は帰っていった。
その時にふわりと香った匂いは。たしかに昨日のものとは似ているけれど、少しだけ違う香りな気がした。
彼女の後ろ姿を見ることもできず、翔真の顔も見ることができず…。ただ地面を見つめて頭の中で今聞いたことを頭の中で整理した。
昨日は翔真と結衣ちゃんが一緒にいたってこと?
結衣ちゃんが翔真の家に行くことは別に不思議ではないし、二人が一緒にいてもなんとも思わない。
だけど昔、二人には"何か"があった?
あえてあんな風に言ってくるということは、幼馴染という関係だけではなかったのかな?
「莉乃、少し話せる?」
すぐに遠慮がちな翔真の声が聞こえてきて、私はその言葉に頷くと、一緒に翔真の家に入ることにした。
翔真は本当のことを話してくれるだろうか…。
今から話すことは一体なんなんだろう。聞くのが少しだけ怖いと思ってしまった。