君と乗り越えた時
「相澤のところに手紙を送った人物が誰なのかを探そうと動いていて忙しかった。莉乃には全てが分かってから話そうと思ったし、状況によっては話さないつもりでいた。」
ごめん、と頭を下げた翔真。
思っていた内容と違う話が出てきたことで混乱する頭を整理する。
「そ、の…犯人は?わかったの?」
その質問に、ふるふると首を横に振る翔真。
「多分、マネージャーが何かを知っていると思ったから昨日は話がしたいって言った。だけど本当に家にあげるつもりはなくて、外で話そうって言ったんだけど家まで来て…。」
「そっか。あの、……昨日って。」
あの子の話が本当だとしたら、翔真が昨日一緒にいたのは違う人。
「他にも誰か翔真の家に来てた?」
「え?ああ…、結衣が恭弥に会いに…。」
私の質問に少しも動揺することなく、結衣ちゃんが来ていたと答えた翔真。
たしかに幼馴染で恭弥くんの彼女である結衣ちゃんが家に来ることなんて珍しいことでもないと思う。
でも……。
「翔真さ、昔…、結衣ちゃんと何かあった?」
「………なにかって、なに?」
そこで初めて翔真の目が一瞬だけ泳いだのを、私は見逃さなかった。