君と乗り越えた時
翔真が部屋を出ていって、しばらくすると、隣の部屋で話す二人の声が聞こえた。
その前から話をしていたと思うけど、言い合いになっているのか段々声が大きくなっている。
悪いと思いながらも、気になって少し部屋のドアを開けると、翔真と恭弥くんが立ったまま向かい合って話をしていた。
「大地くんが大切なのは分かるけど、結衣の気持ちも考えたら?」
「…やっぱり俺は、翔真には勝てないから。」
「どういう意味…?」
「俺じゃ、結衣の一番にはなれない。」
「…なんだよそれ。結衣はずっと…、」
「ごめん…、またしばらく帰らないから。」
翔真の言葉を遮った恭弥くんは、悔しそうに唇を噛んで、自室に入っていった。
そしてバタバタと物音がしたと思ったら大きな荷物を持って何も言わずに家を出ていってしまった。
恭弥くんが声を荒げるところは初めて見た。いつも穏やかな恭弥くん、仲良しな二人が喧嘩だなんて一体どうしたんだろう。
「翔真、大丈夫?」
「あ…、ごめん。変なところみせちゃった。」
「ううん。喧嘩なんて珍しいね。」
「あ〜〜!なんか。うまくいかない時って、何やってもうまくいかないね。」
悲しそうに笑う翔真の顔をみて、私は思わず手を伸ばし、ぎゅっと強く抱きしめた。