君と乗り越えた時
「まじでサークル辞めちゃうのかよ!」
飲み会が始まって30分で、もう酔いが回り始めた航は俺の隣で嘆いている。
「サッカーのコーチのバイトなんて、なかなか出来るチャンスないしな。」
今のバイト先のコーヒーショップで仲良くなった、小学生向けのサッカーチームのコーチをしている人に、コーチのバイトを誘われたのは1ヶ月前のこと。
4月から一人いなくなってしまうから、やってみないかと誘われた。
俺にできるか自信がなくて、なかなか返事ができなかったけど、やってみたいと思えたのは莉乃のおかげだ。
俺が必ず教師になると莉乃と約束した。
コーチのバイトなら、教えるという仕事の勉強になるし、実践が一番だと分かっているから、このチャンスは逃したらダメだと思った。
「翔真と一番仲良かったから寂しいよ。」
「それはそうだな。たまに遊びに行こ。」
「お前、莉乃ちゃんばっかで遊ぶ時間なんて作ってくれないじゃん!」
「……莉乃がバイトの時間とかさ!」
「ほら、ほらね!結局、俺の優先度は低いんじゃん!」
航はグラスに半分ほど残っていたビールを一気に流し込むと、今日は飲むぞ、と頼んでもいないのに自分と俺の分のビールを追加で頼んでいた。
航とは本当に仲がよかったから、サークルを辞める寂しさはあったし、普段ならあまりビールは飲まないけど、今日くらいは付き合ってやることにした。